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「お前が俺をどう思ってるかなんて知るか」
身勝手な言葉を吐き、貴島は強引に佐木の体を引き寄せて唇を重ねた。
「……っ、ん……ぅ」
目を見開き、抵抗する佐木を力で捩じ伏せて、その唇を貪り食った。
ようやく解放すると、佐木はずるずると床にへたり込む。貴島は捕えた両手を離さないまま、崩れ落ちる佐木を見ていた。
「俺がお前を欲しいんだ。黙って俺のモンでいろよ」
尊大に言い放つと、佐木は貴島を見上げた。顔を歪め、唇は震えていた。きつく瞼を閉じて、力なく首を横に振る。
「愛想が尽きたか? ……傍にいるのが耐えられないくらい嫌いになったか?」
佐木は鋭く息を吸い込むと顔を俯けた。貴島が言葉を重ねようとした瞬間、その肩が震え出した。
「俺が……大地さんを嫌いになれる訳がないでしょう」
「……だったら」
濡れた顔を上げ、佐木は再び首を左右に振った。
「ごめん、なさ……い」
「なんで謝んだよ」
無意識に佐木の手首を掴む手のひらに力がこもった。
「……俺は、貴方の傍に、居てはいけない」
「また、釣り合わないとかの話か? そんなのはな……」
貴島のセリフを途中で遮るように、佐木が声を上げる。
「違うんです、っ、……そうじゃなくて……」
感情のまま捲し立てたい気持ちを抑え込み、貴島は佐木の言葉を待った。佐木はどうにか息を落ち着かせようと、深呼吸を繰り返す。
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