ウタカタ エピローグ

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「前にした時……、仕事中、何度も思い出して集中できなかったんです。不謹慎にも大地さんを見る度に思い返してしまって……」  口にするのも恥ずかしいのか、言いながら佐木の体温が上がるのを感じた。 「なので……出勤前は……っ、だぃ……っ、ん」  佐木が言い終えるのを待つのさえできなくて、貴島は強引に佐木の唇を塞いだ。キスの合間に腰を抱き寄せて、脚の間に膝を差し入れて敏感な部分をくすぐった。 「大地、さんっ! ひどいです」  解放すると、例えではなく半泣き状態で佐木が声を張り上げる。貴島はそれににんまり笑って佐木の頭を撫でた。 「それじゃあ今日も一日中俺のことばっか考えてな」 「……意地悪」  佐木が恨めしそう呟く。 「嫌いになったか?」 「……そんなの、わかってるくせに」  悔しげに唸る佐木に、貴島は笑みを浮かべて玄関へと向かった。 「ほら、ちゃんとついて来いよ。遅れるぞ」  身勝手極まりない言葉を後ろに投げ掛けながら靴を履く。  自分の傍へと近付いてくる確かな足音に口元を綻ばせ、貴島は靴紐を結び始めた。 《END》
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