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「まあまあ睨みなさんなって。君を怒らす為だけにこんな高い店取ってないって」
声を掛けて仲居が入ってくる。てきぱきと料理を並べてすぐさま去っていった。
「君は今まで順調に築いてきたイメージ、ぶち壊す覚悟はある?プライドずたずたにされても、成長したいと思える?」
挑戦的な瞳が、貴島に問い掛ける。
「現状の君には、僕は正直魅力を感じない。だけど伸びしろはまだあるかなとは思う。一緒にやってみないとわかんないけどね」
読めない顔で笑って、九鬼は自分の隣に置いていた鞄をごそごそと探り出した。
「それで肝心の映画の内容だ。本来ならそういうのも事務所通すのが筋なんだろうけど、わざわざ諸々の手続き踏んだ段階で、結局内容でNGでした、なんて面倒だしさ」
佐木はその九鬼の言い方に引っ掛かりを覚えた。ということは内容を知った貴島の反応次第で、即出演NGになるようなものだということだ。
「まだ台本はできてないんで原作だけど」
言いながら九鬼は一冊の文庫本を貴島へ差し出した。佐木はそれを見た瞬間目を剥いた。
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