フシダラ 第2話

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「そういや俺のこともずっと『貴島さん』って呼んでたな、最初」 『貴島さん』が『大地さん』に変わったのはいつ頃だっただろうか。確か貴島が呼び方にクレームを付けたのが最初だった。 『お前さ、その貴島さんってのやめろ。なんか気持ち悪ぃだろ、お前のが年上なのに』  突然のことに、佐木は慌てて頭を捻った。 『それじゃあ……大地さん?』  訊ねるように呼び掛けると、貴島は驚いたような顔をした。 『そう来るか……』 『え、すみません、俺何か変なこと言いましたか?』 『変っつーか、普通なら敬称取るとか変えるとかだろ』  言われて佐木は、確かにそうだと思った。見当違いなことを言ってしまった自分が恥ずかしくて赤面した。 『ごめんなさい』  耳まで真っ赤になった佐木に、貴島は噴き出した。 『いや、いいわ、それで』  困惑した表情で貴島を見つめていると、『お前やっぱちょっと天然だな』とからかわれた。ついでに敬語もいらないと言われたが、それはどうしても抜けず謝罪すると、『ポイからいいわ』と笑われた。  そんな出来事を思い出して、佐木は照れ臭いような懐かしいような気分になった。
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