フシダラ 第4話

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フシダラ 第4話

 都内から車を走らせること四時間近く。関東地方北部の山間にある築百年近い洋館でロケは敢行される。期間は五日間と長目に取られていた。途中からの参加や、途中でクランクアップを迎えるキャストもいるが、主要人物の貴島や七原は、五日間みっちり山奥に缶詰めだ。気軽に都内まで戻れるような距離ではない為、その期間は他の仕事を一切入れていない。  ロケ地である洋館は、寝泊まりできる設備が整っていない為、そこから車で三十分程離れた場所にあるコテージ村に宿泊をした。その施設は人の良さそうな夫婦が二人で経営しており、朝と夜の食事の提供だけでなく、昼はロケ地まで作りたての昼食を運んでくれるという手厚さだった。食事は現場のスタッフの士気に大きく関わる為、とてもありがたいことだった。  佐木と貴島は見晴らしのいい場所に立てられた、二人用のコテージに割り振られていた。通常、ロケでホテル泊の場合は、俳優とマネージャーは部屋を分けられていることが殆どだが、この施設は部屋数も多くはないのでそうもいかなかったのだろう。佐木は密かに浮かれたような気分でいた。そんな自分に気付いて、ここへは仕事で来ているのだと、心の中で自らを叱責した。  ピンでの撮影シーンがある貴島は、撮影スタッフと共に早目に現地入りした。
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