フシダラ 第4話

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 私は屋敷の中へ通され、その女性、岡村さと子に事情を説明した。さと子は私から骨壷を受け取ると、それを胸に抱きすすり泣き始めた。私はそれを見つめながら、これで私の成すべきことは終わったと感じた。  その時、ゆったりと大きな曲線を描く大きな階段から誰かが降りてきた。少年と青年、どちらで形容すればいいのか迷いそうな年頃の男。その顔立ちはどことなく早苗を彷彿させた。 「伊織坊ちゃま!」  誰かが階段から降りてきた気配に気付き、顔を上げたさと子が我に返ったように慌てて涙を拭う。膝の上の包みぎゅっと抱き、さと子はなんと切り出していいか迷っている様子だった。階下まで下りてきた男は、その包みを見たあと私をじっと見た。雪のように白い肌と、漆黒の髪と瞳。 「姉さん、死んだの?」  さと子の様子や、風呂敷包みから状況を察したのか、男が呟く。さと子は「ひっ」と鋭く息を吸い込み、再び涙を流し始めた。冷めた瞳で骨壷を見つめる伊織から、何故だか目が離せなかった。
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