『アイオイ』『ウタカタ』『フシダラ』『アザナイ』

フシダラ 第4話

　九鬼の配慮かこだわりなのか、撮影はほぼ脚本の進行順に行われた。二日目には、作中一番の見せ場と言える、美山と伊織のベッドシーンの撮影が行われた。昨日は圧巻の演技を見せた七原だったが、そのシーンの直前は可哀相なくらい緊張していた。それを隣の貴島が話し掛けて解そうとする。
　共演者には積極的に話し掛けて親睦を深めていた貴島だったが、七原に対してはロケ地での最年少であり、また役柄の関係性からか、特に気遣っている様子だった。七原もそんな貴島を慕っているように見える。演者への配慮で、室内の人数は極力減らされた。最低限の撮影スタッフと、七原のマネージャーである片瀬と佐木が残った。七原の様子を固唾を呑んで見守っている女性マネージャーの片瀬は、成り行き次第では『事務所ＮＧです！』と叫び出しそうな雰囲気があった。
　準備が整い、貴島と七原が位置についた。
　美山が戸惑いつつも伊織の部屋を訪れるところからシーンは始まる。