フシダラ 第4話

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 母屋のダイニングは、宴会さながらに賑やかな声が響いている。キッチンカウンターの前に設置された大きなテーブルには貴島と七原や他の俳優が座り、スタッフ達はそれぞれ他のテーブルに散った。毎食三十人近い人数の食事を用意してくれる冴子夫人に、一同は感謝しきりだった。今夜もボリューム満点の美味しい料理を机いっぱいに並べてくれた。更には食後にお茶と手作りクッキーまで出してくれる。恐縮するスタッフに、オーナーの山本が「妻はミーハーなので、皆さんが来て浮かれているんですよ。遠慮なく召し上がってやって下さい」と笑う。  食後の話題は、貴島と七原のベッドシーンだった。見学する気満々だった使用人役の吉田が、締め出しを食らってしまったことをしきりに悔しがっていた。どんな感じだったかと訊ねる吉田に、それを目撃したスタッフたちは一様に目を逸らす。食い下がる吉田に、メイク担当の女性スタッフが、「勿体なくて教えられない」と答えると、吉田は余計に見れなかったことを悔しがった。 「どうぞ、劇場でお楽しみ下さい」と貴島がおどけると、「えっ、俺、初号試写も呼んでもらえないの!?」と焦って、笑いが生まれる。
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