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「九鬼さん、明日は俺も中に入れてよ」
「え、君うるさいから駄目」
泣きつく吉田を、佐木の隣のテーブルに座っていた九鬼が一刀両断する。
「吉田さん、俺と悠のヌードは高いスよ」
貴島は隣の七原の肩を抱く。貴島も、七原も、全員が笑顔の中で、佐木だけは上手く笑えなかった。そんな自分がどうしようもなく嫌になって、佐木はトイレに席を立った。トイレを済ませたあとも、ダイニングに戻るのが気が進まず、廊下を俯き加減でゆっくりと歩いた。
「佐木くんて、大勢でいるの苦手なタイプ?」
突然投げ掛けられた質問に、佐木ははっと顔を上げる。少し向こうに立っていたのは九鬼だった。
「いえ、あの……」
「うるさいもんね、あれだけいると」
佐木が答える前に、九鬼はさっさと自己完結してしまう。
「あ! そだ! いいもん見せてあげるよ」
思いついたように九鬼はそう言って、長い足でずかずかと佐木の目の前まで来ると腕を掴む。
「え、九鬼さん?」
そしてそのまま玄関へ向かい歩き始めた。
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