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「佐木くんてさ、男と経験あるだろ?」
佐木はその質問に何も答えなかった。しかし、僅かに揺れた肩で九鬼は答えを悟って口元を歪めた。
「なんで僕がそう感じたと思う?」
九鬼の言葉を聞きながら、佐木は動揺を押し殺していた。どこか九鬼との会話の中で、自分がボロを出してしまったのだろうか。自分はともかく貴島とのことを知られてしまったとしたら……。全身が強張った。
「妙な色気がある。その手の男が放っておく訳ないから」
まあ勘だけどね、と九鬼は呟いた。
「あと今の反応がね。男を知ってる瞳をしてる。自分より体格のいい、強い力に押さえ付けられる恐怖と快楽……知ってるでしょう?」
そう囁く九鬼の顔の高さ、腕の位置。それらは佐木のよく知っている相手と同じだった。九鬼の言葉に呼応するように、佐木の背筋がぞくりと震える。
「嘘の吐けない子だね」
九鬼はとても愉快そうに綺麗な笑みを浮かべて見せた。
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