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「病院で診てもらうそうです。それで今日なんですが……」
自分が食事を作る為、今日はコテージに残ることを伝えると、三人は驚いたような表情を浮かべた。
「あー、まあ確かにそれは誰かがメシ作らないとだねぇ。買い出しに行こうにもかなり距離があるしなぁ」
「はい、できたら現場まで車でお届けします」
「うーん、ありがたいけど、佐木くんにそんなことさせるのは申し訳ないなぁ。ウチのスタッフ誰か手ぇ空く奴いるかな?」
九鬼は考え込むような仕草を見せる。
「それに今日もシーンがシーンだしねぇ。一応マネージャーさんにも現場居てもらった方がいいとは思うけど」
その言葉に、佐木は黙り込んだ。昨日ほど濃厚なものではないにしろ、今日も貴島と七原はベッドシーンの撮影があった。
「まあこっちサイドの意見としては、撮影中に貴島くんに対して不手際がないかどうか見張っててもらうっていう役割が一番大きい訳だから、あとになってクレームとかしないよ、って言ってくれるんであれば平気かなぁ」
黙ったままの佐木をフォローするように苦笑混じりで九鬼が言う。
「内容自体はあとで映像確認してもらえれば済むしね」
佐木は無言で小さく頷いた。
「ところで素朴な疑問なんだけど、佐木くん料理できるの?」
「料理はよくする方なので……」
「ああ、そうなんだ。でもほんとに大丈夫? なんせ三十人分だよ?」
気遣うような九鬼に答えたのは、佐木ではなく貴島だった。
「そいつ腕はプロ並みなんで、問題ないスよ」
「へえ、そうなの」
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