フシダラ 第6話

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フシダラ 第6話

 夕食の仕度は、その日の撮影が早目に終わった俳優とマネージャーが手伝いに入ってくれた。人がいるお陰で、佐木は料理の手を止めずに済んだが、言い知れぬ不安と恐怖に押し潰されそうだった。 「ここから車で四十分程の場所に、知り合いがやってるワイナリーがあるんです。撮影でお忙しいとは思いますが、もしお時間があればいかがですか?」  医師の診断の結果、やはり冴子の足の骨は折れていた。しっかりギプスで固定され、鎮痛剤も処方してもらったそうだ。佐木に礼を言い、明日からは夫婦で食事を用意するとのことだった。  佐木が中心になって作った夕食を囲む最中、迷惑を掛けたせめてものお詫びに、とオーナーが口を開いた。 「見学はもちろん、たっぷり試飲もして頂けますよ。味は私が保証します」  一気に盛り上がったスタッフたちは、一斉に九鬼を見つめた。 「うーん、まあみんな集中してくれてるお陰で、余裕はあるっちゃあるけどなぁ……」  煮え切らない九鬼に、スタッフたちの視線に熱が込められる。 「明日はクランクアップの役者さんも何人かいるし、終わったあとちょっと楽しいことがあってもいいかもしれないねぇ」
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