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貴島はソファーに座った佐木のすぐ隣に腰掛け、「なんでもいい。今思ってることを話せ」と言った。
「現場に入ったら……、俺は貴方のマネージャーです。大地さんを見守って、支えるのが仕事です」
長い間躊躇って、佐木は口を開いた。
「貴方の魅力を最大限に引き出したい。その為には自分が冷静に客観視をすべきだと思っています」
佐木はマグカップを握り締め、俯いた。
「なのに、今はそれができなくて。カメラが回って、目の前にいるのは美山だとわかってるのに、どうしてもそこから……自分以外の誰かに情熱を向ける貴方から、目を逸らしたいと思ってしまうんです」
手の中のカップが小刻みに揺れる。それを貴島が取り上げてテーブルに置いた。
「お前はほんとに……」
貴島の語尾が溜息で消える。失望されたのだと悟って、佐木はぎゅっと目を閉じた。
「クソ真面目過ぎんだよ。そんなもん完全に割り切れる人間なんている訳ねえだろ」
佐木は恐るおそる目を開けて、貴島を振り向く。
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