フシダラ 第6話

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「ンなもん、現場でお前が、スタッフとか関係者に愛想振り撒いてるだけで、いちいちイラついてる俺はどうなんだよ」 「……え」  意外な言葉に驚く佐木に、照れ隠しなのか貴島は顔をしかめた。 「確かにオンとオフのメリハリは必要だけど、仕事してる時のお前も、今こうして俺と喋ってるお前も同じだ。恋人と他人のベッドシーン見て普通にしてられる方がおかしいだろ」  貴島の手が、膝の上に置いていた佐木の手に重ねられる。 「俺だって同じだ。今の俺もカメラの前の俺も、結局はイコールだ」  握られる手の感触に、切ない気持ちが湧き上がる。 「お前とこんな風になってから、今まで知らなかった感覚とか感情がわかるようになった。それは多分、カメラの前の俺にも繋がってる」  貴島の言葉に、鼻の奥がつんと痛んで、目元が再びじわりと熱を持った。それに気付いた貴島が小さく笑う。 「こんな有能なマネージャーは、業界見渡してもちょっと見あたらねえな」  からかい混じりの最大級の褒め言葉に、堪えられなかった涙が頬を伝った。  貴島が自分を大事にしてくれるように、佐木も心底貴島が大切だ。同じように支えて、守りたい。歩む道が途切れないように、進む足が止まらないように。
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