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二十五人乗りのバスは、満席で出発した。それを見送っていた佐木の肩に、ぽんと手のひらが載せられる。
「さて、オトナの話し合いでもする?」
身を硬くする佐木に吐息で笑って、九鬼は佐木の肩を抱いたまま歩き出した。連れて行かれた九鬼の部屋は一階建ての二人部屋だった。玄関を上がるとリビングと簡易キッチンがあり、その向こうの奥まった場所がベッドスペースになっていた。九鬼は一人でこの部屋を使っている様子だった。
「みんなが戻ってくるまで三時間弱。まあ結構余裕だね」
寝室へと向かう九鬼に、佐木は重い足取りでついていく。
「悪いけど僕、いい人じゃないから、佐木くんがそんなに思いつめた顔してても躊躇いとか湧かないよ?」
びくりと体を竦ませた佐木の手を引き、九鬼はベッドに佐木を座らせた。
「このことは君と僕しか知らない。あとで彼にバラすなんてルール違反もしない。それをネタに強請ったりもしない」
佐木を安心させるような言葉を吐きながら、九鬼は佐木のジャケットを剥いだ。
「彼は今まで通りの芸能活動を行えて、君は彼を失わずに済む。僕はお気に入りの子とセックスできてラッキーで、みーんながハッピー」
九鬼はゆっくりとシャツのボタンを外していった。
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