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「なのにどうして君は震えるの? 僕が怖い?」
九鬼は佐木の肩を押して、その体を横たえた。
「彼以外と寝るのが嫌だ?」
佐木はその言葉に、泣きそうに顔を歪ませた。
方法はこれしかないと思った。貴島のすべてを守るには、もう九鬼の提案を呑むしかなかった。
「俺の体一つで済むのなら、どんな風に扱われても文句はありません」
もうその覚悟ならできている筈だった。
「もし僕が、ド変態の超サディストで、今から死んだ方がマシっていうプレイを強要されるのかもしれないよ? それでも?」
眼鏡を外し、上から覗き込んでくる九鬼に、佐木はぎこちない苦笑を浮かべた。そんなものは恐怖じゃなかった。佐木が何より恐れているは別のことだ。
「この行為が……あの人を裏切ってしまうのだと思うと、怖くて仕方ありません」
もし貴島が知ったなら、どうなるのだろう。怒り狂うかもしれない。許してもらえないかもしれない。そして、きっと深く傷つける。それを想像すると、全身が震えた。
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