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「……俺のことが、好きか?」
佐木はその問いに目を見開き、深く頷いた。好きだ。そんな言葉では足りないくらい、自分のすべてが貴島を欲している。この男になら何をされてもいいし、なんでもしてやりたいと思う。
「だったらこの先、何があっても見誤んな。今のこの環境がなくなろうが、立ち位置を潰されようが、どうだっていい。間違ってもあんな選択するんじゃねえ」
佐木は痛みを噛み締めるように目を閉じ、何度も首を縦に振った。貴島はそれを確かめると、先程のように佐木の腕を掴んで歩き出した。
「……大地さん?」
戸惑う佐木をよそに、貴島が佐木を連れて向かったのはベッドルームだ。
「あの、何を……」
「何って『おしおき』だろ」
驚いて貴島を凝視する佐木に、貴島は辺りを見渡し、クローゼットへ近付いた。
「俺が今どれだけ頭にきてるかわかってねえからなぁ……」
貴島はクローゼットの扉を全開にして、すぐ傍のベッドの前へ移動した。
「来いよ。お前が誰のモンなのか、骨の髄まで教えてやる」
部屋の入口付近に立つ佐木へと振り向いた貴島は、低い声で静かに宣言する。瞬間、佐木の体の中を何かが走りぬけた。恐れ、怯え、不安、そして期待。小さく喉を鳴らし、ゆっくりと貴島に近付く。
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