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「お前、ビビりまくってたよな。マネージャーになってすぐン時」
貴島は佐木の腕を掴むとそのまま引き上げ、向かい合う形で自分の膝の上に載せた。
「大地さんにですか? それはそうですよ。その、ものすごく怖かったです」
貴島の力に逆らうことなく、膝の上に乗り上げた佐木は、少しいじけたように答えた。
「拒絶する雰囲気も、低い声も、きつい言葉も怖かったです。でも一番は無視をされるのが辛かったです」
佐木は僅かに悲しそうに眉尻を下げる。謝罪をする代わりにあまり肉の付いていない背をゆったりと撫でた。すると佐木はほっと安心したように表情を和らげる。
「あと、最初もビビりまくってた」
「最初?」
問い返した佐木は、やがて『最初』が示すものに思い当たり赤面した。
「体中ガチガチで震えてた」
「だって……俺、……男性はもちろんですけど、女性とも、その、あまり経験がなかったんですよ」
「俺だって男と寝たのはお前が初めてだっつーの」
くすぐるような視線を送ると、佐木は困ったような顔をしたあと、照れたように少し俯く。
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