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アザナイ 第2話
郊外にある静かな住宅街。ひっそりと佇む古民家にはインターホンはなく、型の古いブザーが取り付けてあった。隣の佐木がそれを押してしばらくすると、門扉の奥の玄関から藤色の着物姿の女性が姿を現した。白髪を綺麗に纏めた小柄な女性は、静かに一礼すると柔和な笑顔を見せた。
「わざわざこんな場所までご足労をお掛けして申し訳ありません。浅田の家内の瑞江でございます」
ゆったりとした足取りで近付いてくる瑞江に、佐木は深く礼をし、貴島も頭を下げた。
「初めましてこんにちは。貴島大地の担当マネージャーの佐木と申します」
佐木の挨拶のあと、貴島も名乗る。
「浅田は自室におります。どうぞお上がりになってくださいな」
「お邪魔致します」
門扉をくぐると上品な甘い香りが鼻腔をくすぐる。何かの花の匂いだろう。古い家屋はよく手入れがされているように見えるが、日本映画界を代表する人間が暮らすには、少し慎ましすぎる気がした。
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