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「はい。旦那さんは俺がレギュラーで出させてもらってる番組のディレクターさんなんですけど、プライベートでも親しくしてる人で」
貴島の回答に、佐木は前のめりになっていた体をひとまず床に落ち着けた。しかし、依然として心臓は忙しなく音を立てている。
「奥さんが俺のファンだそうで、写真を撮られた日は奥さんの誕生日だったんですよ。なので俺はサプライズゲストで、旦那さん公認デートみたいな……」
「なるほど。……でも、貴島くんにお誕生日お祝いしてもらえるなんて羨ましい」
「そうですか? じゃあお誕生日に呼んで下さいよ」
そう言われると司会者の女性は「やったー」とカメラに向かってVサインをし、客席からは「ずるい」コールが響いた。
「奥さんもとても気さくな方で、腕組んで歩きながら『週刊誌に撮られたらどうしようか』なんて話してたらほんとに撮られちゃってて……」
「それはびっくりですね」
「ほんとに。ディレクターさん……嶋木さんっていうんですけど、最初は奥さんが喜んでくれて上機嫌だったのに、途中からやきもち焼いちゃって、すぐに二人で帰っちゃったんですよ」
「あら、ラブラブですね。じゃあ貴島くんは置いてけぼりですか?」
「はい。かなり寂しかったです。……さっき嶋木さんからメールあったんですけど、奥さんは記事の事知って、記念にって雑誌を五冊も買い込んできたらしいです」
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