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「それじゃあ、あの記事は……」
「ガセですね、残念ですけど。デートしてたのは紛れもない事実ですが、そういう訳なんで。雑誌にあるような密会とか熱愛はありません」
貴島は、「週刊誌は怖いですね」とわざとらしい笑顔を浮かべた。
「貴島くんは週刊誌でよくお見掛けしますが、あれも全部ガセなんですか?」
「ガセばっかですよ。友達数人でメシ食ってただけで深夜密会にされたり。……まあ身に覚えがあるのもありますけど」
貴島は意味深に笑った。
「そうなんですか! ちなみにどれがガセでどれがリアル記事なんでしょう?」
「それはご想像にお任せします」
きっぱりと笑顔で拒否され、司会者は「ですよねー」と苦笑した。
「でも今日は驚きました。貴島くんはいつもこういう系の質問には、肯定も否定もせずに上手くかわしてるイメージがあるので」
「まあ、そうですね。ガセネタにいちいち『それは違う』って否定するのって面倒で……。見る人によっては悪あがきにしか見えないし。だったら放っておいた方がいいかなと。俺、めっちゃモテ男みたいじゃないですか」
貴島が茶化すと、司会者は「いや、実際超ド級のモテ男ですよ!」と突っ込みを入れる。
「でも、それなら今回はどうして真相をお話しして下さったんですか?」
司会者がもっともな疑問を口にする。
「嶋木さんがまたやきもち焼くからです。……それと今回のこれが発端で、俺が本命とケンカしちゃったんで」
あまりになんでもない事のような口調の所為で、佐木はそれを取りこぼしそうになった。しかしテレビ越しに伝わるざわめきが、貴島がとんでもない事を発言してしまった事実を如実に語っていた。
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