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「え……それは、本命の彼女さんが記事を見て怒っちゃったって事ですかっ?」
騒然とする周囲に気付いていない訳はないのに、貴島はまるで普段と変わらない態度だ。
「んー、ちょっと違いますね。っていうか付き合ってないんで。……片想いなんですよ、俺の。まだ好きって言ってもらえてないので」
ついには客席から悲鳴に近い声が聞こえてくる。佐木の頭の中は真っ白になった。
「あの記事見てちょっとくらいやきもち焼いてくれりゃ可愛げがあったんですけど、程々にしとけよ的な事言われちゃって」
「うっわー、余裕だ。大人なんですね」
「年上なんです……あ、人妻じゃないですよ」
貴島のおどけた態度にも、もう客席から笑い声は聞こえてこない。
「なんかその態度に妙に腹立って、イラついてた時に別件でキレちゃったんですよ」
貴島が次々と赤裸々に告白するものだから、司会者はかぶりつき状態だ。
「それだけ本気なんですねっ?」
「俺、純情一途なんで。逃げられて連絡つかないんですよ。……ほんと、どうしてくれんだよ、某週刊誌さん。……まあ八つ当たりですけど」
もはや貴島のあっけらかんとした口調に、笑顔でいられるのは司会者の女性だけだった。
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