アイオイ 第7話

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 いくつかのCMを挟み、次の番組が開始されるまで、佐木は呆然とテレビを見つめたままだった。正気を取り戻して、佐木は弾かれたようにその場から立ち上がった。  あの爆弾発言の連続だ。次の移動は大丈夫だろうか? 記者は? ファンは? 事務所は平気だろうか? (そうだ……それよりも――)  ぐるぐると回る頭の中で、思考がはたりと一番肝心な事柄へと行き着いた瞬間、佐木は本当に自分の心臓が爆発するのではないかと思った。混乱する頭を抱えて、再びずるずると床に沈む。  状況を整理しようとしても、パンクしそうな頭は使い物にならない。必死に貴島の言葉を思い出そうとするが、発熱した時のようにのぼせて上手くいかない。忙しない鼓動も一緒になってそれを邪魔した。 「……録画、しておけば良かった」  とても大事な事を言われた気がする。混乱して、涙が溢れて、手足が震える。何も考えられない。佐木が今わかるのは、貴島に会いたいという気持ちだけだった。
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