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黒いシーツに覆われたキングサイズのベッドが、二人分の重みを受け止め揺れる。いくら経験が少ないとはいえ、佐木も大人だ。この先の展開が予想できない程無知ではないし、貴島に求められる事が嫌な訳はない。それでもこの状況に頭がついていかず、押し倒されたシーツの上で、貴島の視線から逃れるように両手で顔を覆った。
「なんだよ」
貴島の声は責める色はなくどこか甘い。
「……すみません、俺、もうどうしたらいいかわからなくて……」
今こうして貴島と触れ合っている事が現実とは思えない。泣きたいくらいの喜びと、混乱と不安と少しの恐怖。今自分が、どんな表情をしているのか、佐木にはわからない。
「こんな夢みたいな、……大地さんが、俺なんかを望んでくれるなんて、やっぱり信じられなくて……」
言った途端、強引に手を剥ぎ取られた。
「それじゃあ何か、俺の趣味が悪いって言いたい訳だな、お前は」
ふーん、と怒ったような声に、佐木は勢いよく首を横に振った。その反応に貴島はにんまりと笑みを浮かべて、佐木の額に軽く頭突きをする。
「だったら大人しく可愛がられてな」
答えに窮して困った表情で貴島を見上げるとキスをされた。先ほどの、甘やかすような口付けとは違い、交わりはすぐに深いものへと変化をした。
「……ん、っ……ふっ」
薄く開いた佐木の唇から侵入した貴島の舌が、歯茎の裏側を舐め、佐木の舌をくすぐる。角度を変え、口腔を余すとこなく探られて、鼻に掛かった声が漏れる。情交を思わす強烈な口付けに、頭の中が溶け出してしまいそうだった。佐木の口の端を伝った唾液を舐め取り、貴島はそのまま佐木の首筋へと顔を埋めた。
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