アイオイ 第8話

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「……ゃ、大地さん……大地さ……んっ」  佐木はすすり泣きのような声で貴島に助けを求めた。乾いた唇を舐め、貴島は佐木の内部から指を引き抜いた。代わりにあてがわれた熱。これから起きる事を悟った佐木の目に、じわじわと涙が浮かんだ。喜びや不安、期待や恐怖。様々な感情が混じりすぎて、その涙の起因は佐木本人にはわからなかった。 「……ぁ、あ、ぅ……ん、っく」  指とは比べものにならない質量がゆっくりと体内を押し入ってくる感触。 「……っ、息しろ、深呼吸」  強すぎる圧迫感に貴島は顔を歪めた。励ますように佐木の背に何度も唇を落とす。佐木は貴島に命じられた通り、詰めていた呼吸を再開させる。貴島は無理に侵入を果たそうとはしなかった。佐木の呼吸に合わせて少しずつ腰を進める。貴島が全てを収めきるには随分長い時間が掛かった。 「大丈夫か?」  低い声が心配そうに訊ねる。佐木はこくこくと頷いた。これ以上はない程、貴島が傍にいる。そう思うと涙が止まらなかった。 「大地さん、……好きです。大好き」  子供くさく陳腐な言葉だと思う。それでも、頭の中はそればかりで他には何もない。今度は泣けてしょうがない理由が佐木にもわかった。最愛の相手に求められる幸福に、想いを伝えたりない切なさに胸が苦しい。 「ん、っ、あ……っぁ」  律動を刻み始めた貴島に、佐木は上擦った声を上げる。卑猥に響く水音さえも熱を高める要因になった。馴らされたそこに痛みは殆どない。暴かれたばかりの敏感な場所を雄々しい熱で抉られ、はしたなく腰が跳ねる。繋がった場所が、貴島を味わうかのように収縮する。羞恥に勝る快楽に身悶える。
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