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ぐるぐる考えていたのが顔に出ていたのか、突然貴島が佐木の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に掻き混ぜた。
「来たくねえならここにいねえよ。三ヶ月振りの外デートが墓参りってのも斬新じゃねえか」
からかいの視線を向けられて、ただでさえ暑いのに、更に体温が上がってしまいそうだった。照れ臭くて、佐木は慌てて仕事の顔を取り繕った。
「大地さん、サングラスしてなくて平気ですか?」
貴島は少し前まではサングラスをしていたのに、「変な形に日焼けしそうだ」と今は外してしまっていた。
「平気だろ、さっきから誰ともすれ違わねえし」
「……さっき車が通りましたよ」
「軽トラ一台だろ」
今歩いている道は、アスファルトで舗装されているところもあれば、時折じゃり道になったり、と継ぎ接ぎ状態だった。これでも佐木が子供の頃に比べればずっと歩きやすくなった。
娯楽といえばテレビくらいの辺鄙な土地だ。
サングラスをしようがしまいが、垢抜けた貴島がいればそれだけで充分に目立ってしまう。正体もすぐに知れてしまうだろう。一泊二日と長居はしないが、今日の夜には噂が駆け巡り、村中大騒ぎになるかもしれない。 実際、現在管理を兼ねて佐木の生家に住んでいる幼馴染夫婦は、佐木の連れ人を見るなり絶叫していた。
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