6人が本棚に入れています
本棚に追加
一つ進む話
部活が終わり他の部員が玄関に向かう中、僕は一人教室へ足を運ぶ
放課時間はとっくに過ぎ、すでに校舎は殆どの照明が消されている中、僕の所属する教室だけが煌々としてた
「ふふっ」
今日はどんな面白いことがあるんだろうかと想像するだけで自然と笑顔になってしまう顔を少し引き締めてから教室の扉を開ける
「やほー 今日は何してるのー?」
けど、想像と違い教室にいつもの賑やかさは無くて透真が一人で静かに本を読んでるだけだった
「あれ、透真だけ?他は?」
「さっきバタバタしながらどっか行った。荷物はあるしそのうち戻ってくるだろ」
「そっか。自販機にでも行ったのかな」
教室に入り荷物を置くと透真が「ところで」と話を切り出してきた
「あいつらから聞いたが、なんか大切な話があるんだってな」
「大切な話?」
なんのことだろうか?
自慢じゃないが透真のことはだいたい知ってるし、自分のこともほぼ全て話している。なので、今更する必要のある「大切な話」に検討がつかず首をひねっていると図ったようにポケットの中でスマホが震えた。
画面を見ると【YOU、NOWで告っちゃいなYO】【1000%大丈夫】【勇気】【失敗は(多分)無い】という面白がってるのか応援してるのかよくわからないメッセージが次々に表示される
なるほど、大事な話とは愛の告白で、この状況はあの喧しい友人達のおせっかいという訳か……
「詩葉?大丈夫か?」
スマホを見たまま固まっていた僕の顔を透真が心配そうに覗き込んでくる
(……やっぱ好きだなぁ。ちゃんと顔を見て話てくれるとことか、一つのことに全力を注いで努力できるとことか、いや、もう全部好き。大好き。
……いい加減腹括るかな。背中を押してくれる奴らもいるし)
「大丈夫だよ。大事な話、聞いてくれる?」
透真の正面に座り目線を合わせ、机の上に置かれた手を握り地獄まで持っていくつもりだった気持ちを伝える。
「初めて出会ったときからずっとずっと好きでした。貴方のためならなんでも出来るし、全てを捧げられる。それほどに愛しています。これからもずっと」
「………」
「うん。言えてよかった。びっくりしてるだろうけど僕が言いたかっただけだから返事はしなくていよ。それに、この気持ちはもう出さないから安心してね」
(あいつらは、恋を諦めないとか妨害するとか言ってたけどそんな事するわけがない。
僕の一番の原動力は透真の幸せで、透真が幸せになれるなら結婚だって一生の思い出になるように笑顔で協力するし。……透真が僕以外の誰かのものになるのを笑って「おめでとう」って言わなくちゃいけないの?そしたらこの気持ちはずっとこのままなの?)
「詩葉」
「大丈夫、うん、大丈夫。忘れていいよ」
涙を見せないように下を向いていた顔が透真の手でそっと持ち上げられる。
「詩葉、どうしてほしいか俺の目を見て正直に言え。嘘を吐くな」
「………僕と一生一緒にいてほしい。透真が誰かのものになるなんて嫌。僕だけを透真の特別にして」
「あぁ、わかった」
「ほんとに?一生だよ?」
「わかってるよ」
「無理して僕に合わせなくていいんだからね?」
「俺もお前のことが好きだよ。俺は俺でちゃんと考えて詩葉の告白を受け入れた。無理なんてしてない紛れもない本心だ」
「今まで以上にわがまま言うよ?」
「恋人のわがままなんて可愛いだけだ。なにして欲しい?」
「膝抱っこして。あとキスしたい」
「お安い御用だ」
透真は椅子から立ち上がると、軽々と僕を持ち上げると椅子に座り直した。
急に距離が縮まり、少し恥ずかしくなった僕は視線を逸らして透真の肩に顔を押し付け強く抱きしめる。
「もう離してあげらんないからね」
「それはこっちのセリフだ」
肩から顔を離し、そっとキスをする。
「ファーストキス奪われちゃった」
「いや、初めてじゃないぞ。小5の時の宿泊体験で詩葉が寝てるときにしたのが初めてだ」
「ちょっとまって!?そんなの知らない!」
「夜中に起きて横見たらお前がよだれ垂らして寝ててな… つい」
「ついじゃないが?? ていうかよだれってまさかだよね?」
「舐めてもとくに味はしなかったな。しいて言えば歯磨き粉か?」
「 ナ メ タ 」
「怒ったか?」
「いや、びっくりしたけど透真ならいい。それよりもっとキスして?」
「あぁ」
その後のイチャイチャタイムは帰ってきた友人たちに引き剥がされるまで続いた。
「お前ら、戻ってきた俺らを無視してベロチューしてんじゃねぇ!透真!言ってるそばから加賀崎の尻を揉むな!」
「焚き付けたのは俺らだけどさ、もうちょっと遠慮しない?………おい、聞けや」
「校内での不純同性交友禁止!!」
「我々はとんでもないものを誕生させてしまったのでは?」
最初のコメントを投稿しよう!