スクーレとライルのバレンタイン

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「クッキーの材料はあるかしら?」 「クッキー?あるわよ」  後ろから飛んできた質問に答えるライル。その手にはどこから取り出したのか、薄力粉、バター、砂糖、卵が入ったボウルがあった。おそらく魔法で取り出したのだろう。 「ありがとう!私、チョコレートクッキーにしようと思ってたの。私、クッキー得意だから今回はバレンタイン特別版にしようと思って」 「いいじゃない!スクーレちゃんらしさが出てるわね!私は……普通のチョコレートかな」  スクーレはボウルを受け取って隣の台へと向かった。この大部屋はキッチンが並んでおり、パーティや緊急事態のときに使われたりする。通常ではあまり使われない。なのでこんなところでバレンタインの用意をしているなんて誰も思わないのだ。……思われないはず、なのだ! 「普通のもいいけど、ちょっと気になってたレシピがあって」 「なに?」 「ガトーショコラってやつ!チョコレートも使われてるし、ケーキだから満足感も特別感もあって良いと思うの!日頃の感謝にどうかしら?」 「……難しくない?」 「大丈夫よ。えっと……」  ガサゴソとピンクのスカートのポケットを漁るスクーレ。しばらくして、4つ折りの紙を取り出した。 「これこれ!黒池さんの職場の後輩の実家がケーキ屋さんらしくて、その後輩くんが『自分でもケーキを作れるように』ってレシピを書いて送ってくれたの!」 「じゃあそのレシピは……」 「そう!ケーキ屋さんのレシピ!」 「わぁ、ガチなやつだ!」 「美味しそうでしょ!だからこれ作ろっ?」 「うん!」  作るものが決まったところで、二人はチョコレート作りに取りかかった。 「♪」 「わああっ!?」 「!?」  何事かとびっくりするスクーレ。見てみると、砂糖だと思っていたものが塩だったようだ。同じケースで、塩も砂糖も見た目は白色。じっくり見ないとわからない。差はスプーンなどで掬い上げた時の感触くらいだ。これをコーヒーに間違って入れてしまうと最悪なのだが、いつもスグリに任せっきりだったライルには縁の無いもののようで、見分けがつかなかったのだろう。 「どうしてそうなるの!?」  惨劇を改めて見たスクーレはあんぐりと口を開けた。 「私が知りたいわ!もうっ、一体どうしてこうなるのよ!」 「まあまあ、落ち着いて。ここは私がやるわ。ライルさんはかき混ぜるところからスタートしよっか」 「うぅ……うん」  キョロキョロと周りを見ながら入れる。他にも何か間違っていないかの確認だった。  入れ終わったのでライルに渡す。ようやく彼女たちは次のステップに取りかかることができた。
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