スクーレとライルのバレンタイン

1/13
前へ
/13ページ
次へ

スクーレとライルのバレンタイン

「はぁ〜……」  甘い香りが漂うキッチン。乱雑に置かれたキッチン用品には、茶色くていい匂いがするものがこびりついている。  そう、チョコレート!  ため息をついている彼女が作っているのは、バレンタインのチョコレートなのである。 「……あら、パウダーが足りないわ。城のものを勝手に取るわけにはいかないし……」  彼女は茶色いポニーテールを揺らし、エプロンを外しながら呟く。……城の物は全て彼女の物なのだが、優しい彼女はそんなことは思ってもいないようだ。  彼女が見ているのは紙に書かれたレシピ。その端っこには『バレンタイン、勇気を出してくださいね! 黒池』と書かれている。  元々バレンタインという文化は魔界には無かった。……のだが、少し前に侵攻してきた人間たちの代表として黒池皇希という刑事の男性が文化をたくさん伝えた。  バレンタイン、ハロウィン、クリスマス、料理、娯楽施設、誕生日会……などなど。  悪魔と言っても純粋で優しい彼らのことだ。楽しいことは大好きとばかりに試していった。今では人間界のイベントスケジュールと大差無いことになっている。 「うん、エメスに行こう。あそこなら一番の街だし、チョコレートの具材くらいあるでしょ。……バレないように結界を張って……。よしっ!レッツゴー!!」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加