雪の魔女

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「お父さん!」  庭に置いてあった薪を室内に運んでいれば、息子が声を掛けてきた。家の中からぴょんと庭に飛び降りる。 「これ!」 「お、足りないものまとめてくれたのか。どれどれ……」  拙い字で書かれているのは靴下――何足か穴が空いていたらしい――、最近ハマっているお菓子、そしてちゃっかり街で流行っているボードゲームの名前まで。確かに冬はあまり外で遊べないが。 「村で買えないものは無理だぞ」  期待の眼差しを向ける息子に対し、厳しいが悲しい事実を告げる。それにあからさまにショックを受けた表情を見せ、苦笑しながらその頭を撫でた。 「代わりにこっちは多めに買ってやろう」 「!」  好物のお菓子を指してそう言えば、やったあと跳ねた。  買い物に行く準備をする、と部屋の中に戻っていく息子を見送ってから、まだ淡雪ばかりを降らす空を見上げた。  今年の冬は、どれほどの雪が降るだろうか。
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