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何をしているんだろう、と我ながら呆れた。
赤い影はすぐに見失い、代わりに辺り一面は猛吹雪。四方が白い壁で覆われていて、下手に動くことさえできない。せっかく拾った命だというのに、またしてもこの雪に奪われるのか。
とはいえ、考えなしに動いた自分が悪い。おとなしくチームリーダーに従い、吹雪がやんだあとに改めて探せば良かったのだ。
「ばかみてえ」
口に出して呟いたのか、それとも頭の中だけでひとりごちたのか、最早それすら判断がつかなかった。
ざく、ざく、と雪を踏む音が聞こえてくる。こんなもう吹雪の中で動き回る生き物などそうそういない。ついに幻聴まで聞こえてきたかと笑っていれば、白いばかりの視界に朱が入った。
最初はぼんやりと、だが次第に形をなしていく。
赤いローブ姿の人影。多分、女。相変わらず、顔は見えない。
「――――――」
何か喋ったような気がしたが、うまく聞き取れなかった。
「……あんた」
声が出ているのかわからない。だが、これだけは言わなければならない。
「あんた、逃げた方がいい」
思っていたよりも流暢に舌が回った。赤い影が動く。まるで困惑しているかのようだ。
「何しに、山に入ったのかは知らないが……逃げた方がいい」
左手を伸ばす。フードの奥の、顔に触れた瞬間、焼けるような熱が指先を襲った。
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