愛する我が子へ

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 親権者となる両親が、未成年の娘を母子寮に入所させることに同意し、佳奈は娘の出生届を提出。  名前は佳奈によって、「愛子(あいこ)」と名付けられた。  子供関係や入所手続きの書類を、相談員の説明の元書いていた際、一枚の紙を見た佳奈はそれを凝視する。  それは戸籍謄本で、以前は上から父、母、佳奈と記載されていたが、現在は佳奈と愛子だけ。  前に一度だけ見たことがあり、それが親子関係の証明だと知っていた佳奈は思わず唇の震わす。  一部始終を見ていた相談員はその心情を読んだのか、説明を行う。  未婚でも、子供を産んだら両親の戸籍からは除籍となり、子供と共に新たな籍を作る。  その制度を佳奈が理解出来るように紙に書いて、ゆっくり分かりやすく、何度も説明してくれた。  よって、両親の意思ではないと理解した佳奈はどこか安堵の表情を浮かべる。  あれほど邪険にされていても、両親ということなのだろうか?  相談員は不意にそう思い佳奈を見ると、その視線は新生児の娘を差していた。 「じゃあ、私と愛子は親子なんですね……」  次は戸籍謄本を眺めて呟いた。 「ええ。そして国がそれを認めているということ」 「……はい」  佳奈はただ、小さな寝顔を見つめていた。
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