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「……何?」
「目を潰されて、父を奪われて、あれから、十年?」
言いながら、自分の言葉に際限なく興奮が高まっていくのを感じる。
「嫌味な狐面を被って、馬鹿みたいに強くなって、それで今は、こんな――」
ひゅうひゅうと死にそうな喘鳴を上げながら、堪えきれずに幻乃は哄笑する。
「馬鹿ですね。本当に、馬鹿すぎる。死にたくなるのも納得しました。どんな気分なんですか? 恨んだ相手に惚れ込んで、味方だった者を裏切って、家を捨ててまでこんなことをしているっていうのは」
「……最悪だ!」
本気で嫌そうに言うものだから、とうとう笑いが止まらなくなった。乱暴に突き上げられるのが気持ちよくて、食い殺しそうな目で睨まれるのが幸せでたまらない。
「あぁァ! あ、いい……っ、おれ、も、ほしい。あなたが、欲しい……っ、直澄さん……!」
がくがくと体を震わせて、幻乃は喉を晒しながら直澄の背をかき抱いた。死んでしまいそうな幸福感の中で絶頂を迎えて、うわごとのように直澄の名を呼びながら、幻乃はそっと目を閉じる。
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