狂犬は甘やかに鳴くか。

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 ロランやら辰巳やら、果てはロイクにまで手を出している男の言い種とは思えないが、ヴァレリーに悪びれた様子はちっともなかった。いやむしろ、そんなにも求められていたのかと、イヴォンが密かに感動しているなど誰が想像できようか。  長い指に胸を(まさぐ)られ、イヴォンの顔は益々朱に染まった。 「ん……っ、ヴァル……」 「待たないぞ」 「くすぐったい……」 「そのうち気持ち良くなる」  抵抗する気はないのか、イヴォンはその手でヴァレリーのシャツを掴んだ。きつく閉じられた目蓋と、あえかな吐息を零す唇が、なんとも初々しい雰囲気を醸し出していた。  ――案外可愛らしい顔をする。  口に出せばイヴォンに反論されるであろう事を思いつつ、未だ主張する事を知らない胸の突起を指先で押し潰す。 「ぁッ、……ぅ」  嗚咽にも似た嬌声に、イヴォンは堪らず口元を自身の手で押さえた。 「っ……ふ」 「恥ずかしいのか?」  ヴァレリーの問い掛けにこくこくと頷くイヴォンの手は、だがしかしあっさりと大きな手に掴まれる。 「な……っ」 「この程度で恥ずかしがるなよ。これからもっと啼かせてやるつもりだからな」  ほんの僅かに芯を帯びた胸の突起を指先がゆるゆると玩ぶ。他人に触れられたことのないイヴォンのそれは、あっという間に硬さを増した。 「んっ……ぁっ、それっ、ぞわぞわする……っ」  イヴォンの手がヴァレリーの腕を掴むものの、胸元を弄る手は止まりはしなかった。長い指が時おり突起を弾くたびにイヴォンの躰がひくりと震える。 「俺ばっか……やだ…」  ともすれば泣いているようにも聞こえる声を、ヴァレリーは唇で呑み込んだ。唇を合わせたまま、下肢へと伸びる長い腕を小さな手が掴む。だが、抵抗は些細なものだった。  剥き出しにされた小さな躰は、そのどこかしこもが朱く染まっている気がする。 「んぅ、……ぁ、っ」  (つたな)いながらも舌先を吸い上げるイヴォンの背に腕を差し込んで、ヴァレリーは軽々と膝の上に抱えあげた。 「っな、に……」 「ほら、腕を抜け」  今や絡みついているだけのシャツを軽く引いてやれば、イヴォンは恥ずかしそうに腕を抜いた。生まれたままの姿でヴァレリーと向かい合う。 「俺だけ……?」 「ん?」 「……ヴァルは……脱いでくんないの?」  些か不満そうな声にヴァレリーはニッと口角をあげた。 「お前が脱がせろ」  短い言葉にイヴォンは何も言い返すことが出来なかった。おずおずと伸ばされた手が、シャツのボタンに掛かる。傍から見ていても指先が震えていた。  ボタンが外れるたびに、大きな手がイヴォンの頭をゆるりと撫でる。まるで褒められているようなそれに、イヴォンは増々羞恥を募らせた。 「な、撫でんなって……」 「嫌なのか?」 「嫌っていうか……なんか、恥ずかしいっていうか……」  子供扱いされているような気分になると、小さく呟かれたイヴォンの声にヴァレリーは微かに笑った。 「良く出来たら褒めてやるのは当たり前だろう。歳なんて関係ない。それに、好きな奴は甘やかしてやりたくなるものだ」 「う……ん…」 「それともお前は、俺に虐められたいのか?」  ぐいと持ち上げられた顔を、ヴァレリーが覗き込む。灰色の瞳の中で、イヴォンは小さく首を振った。 「でも、ヴァルの……好きにしていいよ……」  はだけたシャツを両手で握り締めるさまが、ヴァレリーの欲情を煽った事は言うまでもない。抱えていてもなお僅かに低い位置にあるイヴォンの唇へと口づける。 「んぅ、ぅっ……ヴァ…ル…、好き……」  うわ言のように呼ばれる名前が耳に心地良かった。艶を帯びるイヴォンの声を聞きながら、窮屈さを感じ始めた雄芯に前を寛げる。 「イヴ、手はこっちだ」 「ぅ……?」  小さな手を下肢へと誘う。 「一緒に扱け」  曝け出した雄芯をイヴォンのそれにぴたりと添えて、ヴァレリーは小さな掌ごと握り込んだ。ゆるりと手を動かしてやれば、イヴォンの腰が僅かに浮き上がる。 「んッ、あっ、待っ……ヴァルッ」 「もう充分待ってやったろ」  謀らずとももう一方も下肢へと伸ばすイヴォンの手をあっさりと捉え、ヴァレリーは無造作に手を動かした。 「アッ、っ……熱っ、ぃ」
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