6人が本棚に入れています
本棚に追加
《RENG SIDE part5 = the newspaper》
新聞を拾った、本当は学びたいのかもしれない。
捨てた人間にとってはゴミ同然のこの紙切れも、俺には宝となる。
人々に踏み潰され、薄汚れた新聞紙が自分と重なった。
俺も金を持つ奴らに踏みつけられ、蹴られ殴られここまできた。
この国の全人口のうち少なくとも一%にあたる、約千三百万人に戸籍がないと、この新聞には書かれている。
一%が全体に対し極少ないことは、俺にも理解できる。
では千三百万という数字は少ないのか、多いのか。それが俺には解らない。
国政調査で政策違反や罰金減免、分割払いを求めた結果、多数の無戸籍者が判明したという。
罰金を支払えず申告のできなかった貧困層を含めると、更に無戸籍者が増えると見られる。
「李蓮! 陳傑がサツにパクられた」
入ってきたのは張勇。
俺たち孤児に存分な学はなく、国からの援助だってろくに受けられていないのが実情だ。
だから様々な形で金を集めている。
俺は俗にいうサーカス団みたいな場所に属し、休日は小遣い稼ぎに道端で大道芸。
張勇だって昼間は日系工場で働いて、夜は寝る間も惜しみ肉体労働だ。
「あいつ、取り柄なかったからな」
煤でくすんだ窓の外を見詰め、俺は答えた。晴れか曇りか判らない。
戸籍がないと無償の義務教育も受けられず、医療保険加入や自動車免許取得、婚姻も認められない。
だが他人と比べるつもりもない。
この世に生を授けた両親の顔を知らなければ、この世に人間を生み出した神の顔すら知らないのだ。
今を生きるだけで精一杯。
最初のコメントを投稿しよう!