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《RENG SIDE part3 = the world we knew》
夢で見た丘へ、行ったことは一度もない。この世のものかすら判らない。
なぜなら俺にとっての世界とは、居住空間であるこの地下街と、金を稼ぐために行く都市部との往復以外、他にどこにもないからだ。
両親がどんな顔かも知らず、物心がついた頃には人買いに売り渡されていた俺だ。
夢の中の少年とは正反対で、耳は聞こえる、金はない。
この街には幼い頃親に死なれたり、売られたり、そして捨てられたりした孤児たちで溢れている。
だからこの街の住人は俺も含め、世界になんて興味がない。
目を覆いたくなるような現実が、目の前にゴロゴロと転がっている。
だから自分の住む大陸がどれほど大きいかを知らなければ、自分たちが今必死になって稼いでいるこの通貨が、世界でどれほど価値あるものかも知らないし、知ろうとも思わない。
知ったところで何の利益もないから。
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