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雪うさぎに化ける
今日はお日様が出ている。こんな日は家の裏にある畑に遊びに行くんだ。ズボズボぬかるむ雪が積もった林を抜けると近場の山がどーんと目に入る。林の奥は畑がズラリと並んで、車も来ないし人もほとんど来ない最高の遊び場だ。
お友達はゲームが楽しいみたいだけど、僕はやっぱり外で遊びたい。天気のいい日はうずうずしちゃう。今日はとりあえず雪だるまを作ろうと思う。雪原のあちらこちらに僕の作った雪だるまがいるんだ。あと一つ作れば雪だるまのいる場所が結界みたいに思える。春が来ちゃう前に完成させたい。完成したらなんかいいことありそうだもの。
この辺に作ろうと場所を決めて小さな雪玉を作って雪の上をころころ転がす。うまく丸く作るためにはコツがある。全体が丸くなるように転がさないとタイヤみたいになっちゃうから気をつけないと。
ころころ雪玉を転がしながら僕の視線は足元に向かう。何かの動物の足跡。犬か猫か狸か狐かうさぎか。熊はないな。熊はまだ冬眠してるし、熊が出るようならお母さんが雪原で遊ぶのなんて許さないもの。春先には熊出現のニュースを聞いたりするけど、この辺じゃ聞かない。畑がずらーっと並んで向こうの山まで距離あるし、間に川もあるもの。ここはまだ安心。
ころころ転がした雪玉は僕の頭くらいの大きさになる。完成までまだまだ時間かかるけど、ちょっと休憩。僕は雪原にごろんと大の字に寝っ転がる。今日は冬にしては温かい。ぽかぽかの陽気に僕は大きなあくびをする。外で遊ぶのは好きだけど、一緒に遊ぶ誰かがいたらもっと楽しいのに。
「何だったら動物でもいいのになぁ」
犬とか猫とかと雪の上ではしゃぐのも楽しそう。お母さんが動物が苦手だから飼うことはできないんだけど。
ぼーっと空をふわふわと流れる雲を眺める。雲を眺めながら冒険のお話を考えてみる。あの雲は正義の妖怪で悪い鬼を倒すために変化しながら旅をしているんだ。
雲はゆらゆらと形を変えて、すーっと消えていった。
もう一度あくび。目をつむって大きなあくびをしたあと目を開くとそこには赤い目があった。ラッキーと思ってその顔をまじまじ見る。
「お前さん、寝たきりだけど具合悪いんか?」
僕は驚いてばーんって起き上がる。
「うさぎがしゃべった!?」
僕の顔をのぞき込んでいたうさぎは腰に手をあてて、ふーんとため息を吐いた。
「おいおい。心配して人の言葉しゃべったのに、その態度はないんじゃないかい?」
どこからどう見てもうさぎ。さっき見た足跡はこのうさぎの足跡だったんだろうか?
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