10人が本棚に入れています
本棚に追加
1.悪魔
何かが起こっている、俺の知らないところで。イッサはそう考えながら、駅への道を急いでいた。
今日は高校時代の悪友三人と飲み会だ。全員揃うのは卒業以来だから、七年ぶりになる。
『久しぶりに飲もうぜ』
LINEでそう誘ってくれたのは、大学も同じだったニノだ。在学中は何度かサシ飲みや合コンをしたが、就職してからお互い多忙でほとんど連絡もしていなかった。
せっかくだからとショータとミドリカワにも声をかけ、たまたまみんな暇だということで日程は次の土曜日に決定。履歴の下の方で埃をかぶっていた四人のグループチャットは久しぶりに活気づいた。
お誘いは嬉しかったし、再会はもちろん楽しみだ。しかし今回のことで、イッサの中にあった疑惑は確信に変わった。
何かある。
俺の知らないところで、何かが起こっている。
なぜなら、ここ一ヶ月のうちに、そんな突然のお誘いが何度もあったのだ。中学時代の友人、サークルの仲間、ゼミの先輩や転勤した同期まで。ランチや飲み会の予定で、イッサのスケジュールはどんどん埋まっていった。
貸していた本を約束なしで返しに来る後輩がいると思えば、特に親しくもないのに借金を頼んでくる同僚もいた。急に涼しくなった十月のなかばから、「ちょっと早めの忘年会」は今日で六回目だ。
最初のコメントを投稿しよう!