失恋の儀式

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「茜ちゃん、本当にこれに切るの?」あれから田神が持ってきたカット本に載っている中で1番短い髪を指差しオーダーした。 「はい。私にはもう不要なので。」 「いやさぁ、何もこんな短くしなくても。俺よりみじかいじゃん」確かに田神は肩くらいの長さでパーマが当てられているのかいいラフさ加減で結んでいるのがオシャレだ。 「いいんです。本音言うと髪を見ちゃうと泣いちゃいそうなんで。出来るだけ視界に入れたくないんです。だから、バッサリいってください。」 茜は自分で言いながら何だか悲しくなってきて、鏡に映る自分から視線を外した。 「分かった!俺も男だ。願いは聞くよっ」 ん?何故に田神が泣きそうなのだ。と彼の声が掠れているのを疑問に思いつつハサミが髪に通された。 茜はギュッと目を(つむ)り切り落とされるその瞬間を待つ。 「待って!!」 切羽詰まった声の後に背後からギュッと抱きしめられた。 あ、咲夜。 何ですぐに分かってしまうんだろう。 彼の香りなんてもう気づきたくもないのに。 茜の目からハラハラと涙が流れて顔をあげて咲夜かを確認する事も出来ない。 「咲夜!おっそいよ!マジ焦ったー」田神の叫び声が聞こえて茜は視線を上げる。 「ごめん!悠太さん!巻いてくるのに時間かかってさ」 「いや、本当に良かった。茜ちゃんめっちゃ切る意志強いからさ。俺も、もうどうしようかと」 「ごめんね。本当にありがとう。今度お礼するから」咲夜はそう告げると茜が着ていたケープを剥ぎ鞄を受け取って、手を繋いだまま店の外に連れ出した。
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