5月 室生犀星

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5月 室生犀星

              5月 室生犀星        悲しめるもののために        みどりかがやく        くるしみ生きむとするもののために        ああ みどりは輝く  とてもシンプルな詩だ。シンプルであるが故の力強さがある。想像力がある。  5月というタイトルだ。青葉若葉がまぶしい。今よりももっと緑が身近なものだったのか。  四行目の「ああ」という感嘆とリズムの変化。二行目の「かがやく」はひらがななのに対して、四行目の「輝く」は漢字である。  それに対し二行目も四行目も「みどり」はひらがなである。5月だからだろうか。さくらと早々とお別れして、悲しむ暇もないうちに、青々と生い茂る葉っぱに室生犀星は何を期待したのか。  悲しめるものも、くるしみ生きむものも、もちろんみどりを待ち望んでいるだろう。  
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