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ヴァンドム伯爵家では、またひと騒動がおきていた。
マーガレットの所在がやっと割れたのだ。
「この愚か者が!!なぜ最初から私に報告しなかったのだ!!」
「どうかお許しください。本当に、本当に申し訳ございませんでした……!」
激怒した主人の前で涙ながらに土下座をしていたのは侍女のカリンだった。隣に控える伯爵夫人が真っ青な顔でカリンに詰め寄る。
「では、マーガレットは今までずっとカリンの家で療養していたのね?」
「はい。しばらくは出血も止まらなかったので……。わ、私は、何度もお嬢様にあの絵描きのことは諦めろと申しました。それなのにお嬢様は……!」
カリンが自白したのは、マーガレットがまた行方をくらませたからだ。フィルの現状を知り、隙を見て町へと飛び出したのだろう。
伯爵の決断は早かった。すぐに従者をかき集め町へと下りる。絵描きの居場所を割り出すと、まるで戦でも仕掛けるかのように息巻き、町外れの教会へと突き進んだ。
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