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未婚のまま妊娠した女に、結婚の話が舞い込むことは二度とない。マーガレットは地方の別邸へ送られ、今も慎ましやかに暮らしている。憐れむ人もいるけれど、それはきっと噂しか知らぬ者だろう。
なぜなら、そう遠くなくヴァンドム伯爵家は巧みな光で一世を風靡した、とある画家を婿養子として迎えることが決まっているからだ。
「ママ、あっち。パパいたよ」
大きな夕日に照らされ、黄金色に揺れる稲穂の先を幼子が元気に駆けて行く。
マーガレットが手を振ると、逆光の中で一人黙々と絵を描いていた男は筆を置き、膝に辿り着いた幼子を高く空へと抱き上げた。
—END—
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