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仕事だけはできたらしいけど、プライベートでは『知人』の一人もいなかった中身のないつまらない男。
どんなろくでもない奴にだって、友達まで行かなくても子どものころから繋がってる知り合いなり学生時代の同級生くらいいるでしょ。
それが「ただの一人もいない」でもうお察しよ。
母さんは高校卒業してからずっと県の役所勤めで、十分一人で生きていく経済力があったわ。
結婚後も私が生まれてからも仕事はそのまま続けてたからね。
あいつは辞めろってしつこく責め立てたんだって。でも、母さんはそれだけは絶対に聞かなかった。
だったらなんでこんなのと結婚したんだろう、って不思議で仕方なかったのよ。
「当時はまだ『結婚しないと』って圧力が影に日にあったから負けちゃったの。つい気弱になって失敗したと思ってるわよ。でも、結婚より離婚の方がずっと大変だって本当ね。あなたはよく考えて」
母さんが離婚したあとうんざり顔で言ってたな。
私には知らせないようにしてたけど、離婚自体何年もずっと話し合ってたそう。
あいつが承知しなくて長引いたんだってさ。
結局は「養育費も家の権利もいらない」ってことでようやく話つけたらしい。自宅の名義は半分が母さんで、当然お金もその分出してたのに。
だけど私も母さんも、くれるって言われても断るよ。あいつの臭いの沁みついたあんな家なんか。
自分が「離婚される」なんて体裁悪くて耐えられなかったんだろうね。
どうせ誰も気にしやしないってのに。
周りもみんな大人だから口にしないだけで、「こいつなら家族に見捨てられて当然」だとしか思われてないよ、お前。
母さんが離婚してくれて本当に良かった。
ジェイと離れなきゃならなかったのは、ただ辛かったし今も辛い。
だけど、あいつと離れられたのには喜びしかないね。
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