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【2】
定年後は「家でひとりボーッとしてたらボケるじゃない!」と精力的に動き回ってる母さん。
ウォーキングだのコーラスだの、趣味の会にあちこち所属して楽しんでる。
働いてる間はそんな暇なかったもんね。時間よりも気持ちの余裕が。
「母さん、もっと自分のこと考えなよ。もう私も高校生だよ? ちっちゃい子どもじゃないし世話焼いてもらう必要もないんだから、ちょっとは遊べばいいじゃない」
「何言ってんの! 少なくとも大学卒業するまでは和美の学費が最優先だし、もし私が倒れても大丈夫なように少しでも蓄えとかないと!」
やっと二人だけで暮らせるようになったときの私の言葉に、真顔で首を左右に振った彼女。
家事だって「私がやる」と言っても、「あなたは将来のために勉強しなさい」って譲らないんだもの。
母さんの気持ちは私にもよくわかるから、もちろん手伝いはしたけど勉強を頑張った。
「とにかく、自分の楽しみは和美が独立してからでいいわ。その分一人になったら好きなようにするから」
そう明るく笑ってた母さん。
でも結局、私が大学出て就職しても仕事中心の生活だった。根っから働くのが好きなんだよね。
私は母さんのおかげで、大学で取った資格で専門職としてずっと一人で暮らせてる。
最初から結婚なんてする気もなかった。
仕事は激務の範囲だけど、その分収入は平均より結構上。自分で選んだ職業だし、大変じゃないって言えば嘘だけど特に不満もないわ。
むしろ周りにも独身者は少なくないし、そういう意味での生き辛さは一切ないから楽なくらい。
だから今、母さんがいきいきしてるのが本当に嬉しい。
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