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「一度、見に行く」  もうそのままの意味。  弱ってるところを一応『見るために行く』だけ。惨めな姿を眺めて嘲笑うために。  私は「面倒を見る」なんて言ってないし、母さんもそんなつもりはないはずよ。  ただ、「娘が『続けて』見てくれると思った」って弁解には使える。余計なおせっかいしたがる奴がいたとしても。  いや、実際にいるんだ、そういう輩ってどこにでも。  私があの家を訪ねることは、隠す気もないからすぐわかるだろうしね。  母さんにはこれ以上しなくていい苦労させたくないのよ。私をいくらでも利用して平和に過ごして欲しい。  そもそもとっくに、──私が中学卒業したときに離婚してる母さんは、あの男とはもうなんの関係もなかった。『娘』の私はともかく。  反面、私は道義的には責められる立場かもしれない。  でも、「父とはもう二十年以上会ってませんし、親だから『一度見に行く』って言っただけです。てっきり病院とか福祉の方でお世話になってるものだと思ってましたぁ」で受け流せば済む。  そういうの気にするような人間じゃないのよ、私は。残念ながら。  ああ。もちろん、対象が母さんなら別だけど。
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