6人が本棚に入れています
本棚に追加
居ても立っても居られずに、わたしは椅子から立ち上がる。
ぺちゃくちゃとくだらないお喋りしてる子たちの背後を通って、オフィスを出た彼を追い掛けた。
「亨!」
廊下を歩くあなたに追い付いて、後ろから肘を掴む。
「未散……」
慌てたように振り向いたあなたに、そのままフロアの端まで連れて行かれた。
少し死角になった、自販機とテーブルセットが置かれた休憩コーナー。
「社内恋愛は禁止じゃないけどさ。ちゃんとけじめはつけてくれよ。公私混同は嫌なんだ」
「でも!」
わかってるわ、そんなこと。
でも大事なことなのよ! これは何よりも大事な──。
「……とにかく、帰りにお前の部屋に行くから。ちょっと話が──」
「お、小笠原」
飲み物を買いに来たらしい同じ課の社員の声に、あなたはハッとしてわたしに作り笑顔を向ける。
「じゃあね、み、──渡辺さん」
「ああ、渡辺さんも居たんだ」
その声に我に返って、わたしは彼におざなりに会釈だけ返した。
オフィスに戻るために自然急ぎ足になりながら、私はもうあなたのことしか考えられない。
最初のコメントを投稿しよう!