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香美村 佳蓮
まずは少しだけ僕の彼女の紹介をしよう。
香美村 佳蓮。
県立成瀬高校、2年B組。出席番号8番。
彼女を一言で表すなら"毒"だ。あくまでそれは現段階での僕の評価であり、今後これが"薬"と変化する可能性も、はたまた"猛毒"へ変わる事もあるのかもしれない。
ここで、一つ例えば話をするとしよう。
彼の有名な偉人の言葉を借りる。
『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない。』これはフランス革命の引き金にもなったマリー・アントワネットの言葉だ。
もし、同様の状況下があり。香美村 佳蓮に助言を求めたのならこう言うだろう。
『パンが無ければ、ある者から奪えば良いじゃない。』とだ。
あまりにも、無秩序で野蛮な発言だろう。
しかし、当人の問題は解決する。これもまた事実だ。
強引でアンモラルな提案を平気な顔で言ってきそうなのが僕の彼女。香美村佳蓮なのだ。
そんな彼女のストッパーであり首輪となる事を僕は受入れたのだ。
意外にも、交際の申し出は彼女からだった。
先月のバレンタインデーの日、不自然に人払いされた放課後の教室。
「チョコレートヲアゲル。コレハホンメイノチョコ。」と無表情で何故か片言で渡された事が交際のキッカケだった。
少し経ったあたりで、「香美村さん、僕のどこを気に入ってくれたの?」と聞いてみた事がある。しかし、結果無視されたのは記憶に新しい。
未だ僕には、彼女の心情と目的が全く分からない。
まぁ、性格を除けばルックスは整った方だと思う。
少し小柄で童顔な見た目ではあるが、しかし、その内面を知れば…………、例えるなら、ワサビ入りのシュークリームみたいなモノだ。
そして彼女は、そのワサビを上手に隠す。
身近な人間は皆シューの中には、ホイップクリームかカスタードでも入っているのだと疑わない。
仮にバレそうになっても、『違うの、これは抹茶だよ』。と上手に、のらりくらりと逃げおおせるだろう。
但し、僕を除いてはだ。
僕は以前、ある事をキッカケに彼女の内面を覗き見てしまったのだ。
それ以来、彼女の企みや良くない行いを監視し可能な限りそれを止める。
それが僕、 中城 周次郎の彼女と付き合う理由であり意味そのものだ。決して、可愛い女子などと思わない。
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