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ななちゃんはウサギさんの友達がいます。名前はユキちゃん。雪のように真っ白でふわふわのウサギだから。
ある雪の日。ななちゃんは、ユキちゃんのあんよが冷たくならないようにスキーを作りたいと思いました。ユキちゃんの真っ白な毛色に合うように人参でスキーを作ったななちゃん。
ユキちゃんは、スキーを履くより人参をパクパクと食べてしまいました。
「せっかくスキーを作ったのに酷いよ」
ななちゃんは怒ります。
「だって美味しい人参なんだもん」
ウサギのユキちゃんは寒くてもへっちゃら。
「ほら、ななちゃんも遊ぼう?雪溶けちゃうよ。走ってれば寒くない、おいで」
ユキちゃんはピョンピョン跳ね回ります。
「ユキちゃん待って~」
ウサギのユキちゃんを追い掛けて、ななちゃんもさらさらの雪の広場を駆け回ります。
「明日も遊ぼうね、ユキちゃん」
ななちゃんがユキちゃんの背中を撫でると、ユキちゃんは嬉しそうに鼻をひくひくさせました。
「明日も寒くて雪が降るといいね。また遊ぼうななちゃん」
次の日…。
広場の砂利の上には、人参で作った小さな小さなスキーだけが残っていました。雪ウサギのユキちゃんは、どこかに消えてしまいました。
「ユキちゃん…そっか。暖かいからもうスキーはいらないんだね。またいつか遊ぼう。雪が降ったら真っ赤な人参のスキーを作ってあげる。足…冷たいよね?」
ななちゃんは、泥だらけの人参のスキーを涙を拭いて拾おうとしました。すると、どこのお家から逃げ出したのかふわふわの白いモルモットが人参のスキーに噛りついています。
「…ユキちゃん?」
白いモルモットは人参のスキーを噛るのを止めて、小さく噛った人参の残りの上に後ろ足を乗せます。もっともっと小さくなった人参のスキーの上でモルモットは跳び跳ねて喜んでいます。
「ななちゃん、また遊ぼう」
ななちゃんは白いモルモットをお家に連れて帰ってユキちゃんと名付けてお友達になりました。ときどき脱走してピアノの後ろに隠れたり、小さくて隠れんぼが大好きなユキちゃん。ななちゃんの家で、ユキちゃんは小さな小さなアイドルになりました。
パパもママもななちゃんも、みんなモルモットのユキちゃんに夢中。ユキちゃんはななちゃんと再会したあの日以来お喋りはしません。
でも、ある日突然、小さな小さな人参のスキーを食べ終わると、一言だけ喋りました。
「スキー好きやねん」
ユキちゃん渾身のギャグはダダ滑り。その日以来元雪ウサギでモルモットのユキちゃんは人間語を封印しました。うさぎは寂しくても死なないけど、ギャグが滑ると人の言葉は話さなくなるのでした。
(了)
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