第3話 相川 vs 綾菜

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 送迎車からは1人の杖を突いた男性が降りてきていた。デイサービスのスタッフに介助されながら車を降りた男性を、綾菜が介助しながら家へと入っていく。 「綾菜ちゃん?」  勇樹は咄嗟に声を掛けた。綾菜は勇樹の顔を見て驚いた顔をしていた。 「勇樹さん……ちょっとそこで待ってて」  綾菜は男性を介助しながら家に入っていき、しばらくしてまた家から出てきた。 「実は、私のお父さん、1年ぐらい前に脳梗塞で倒れて、右半身に麻痺が残ったの。母は若い頃に亡くなって、父が男手ひとつで私のことを育ててくれて……1年前から私が父の介護をしながら生活してるの」 「もしかして、ジャングルジムの仕事を遅刻してきたのって、お父さんの介護が原因だったの?」 「……うん。私の出勤前に父がデイサービスに行くための準備をしなきゃいけないし、父も麻痺があるから思うように動けなくて、時間が掛かってしまうことがあって……それで遅刻してしまうことがあったんだよね」  綾菜は気まずそうな顔をしながら、お父さんのことを話してくれた。
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