第1話 勇樹、仕事を辞める。

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 新年度が始まり、街には新入社員や新入生らしき初々しい人達の姿が多く見られた。  俺はこれからどうすればいいのか分からず、とりあえず街をふらついていた。 「平日に自由に街を歩けるなんて、何年振りだろう」  街中に咲く桜も、俺の退職を祝ってくれているようだ。 「そういえばここ数年、桜を見てキレイだと思う心の余裕すらなかったな……」  とりあえずカフェに入って季節限定のドリンクを飲みながら、優雅に読書なんかしてみた。  そんな自由な生活もしばらく経つと、焦りのような感覚が芽生えてくる。本当は雇用保険を受給しながらゆっくり就職活動をしようと考えていたが、街で働いている同年代の人達を見ているうちに、働いていない自分がダメな気がしてきた。  実家暮らしの勇樹はすぐに生活に困るわけでもないのだが、罪悪感のような気持ちが溢れてきた。
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